障害年金・眼疾患の不支給事例~認定基準の解釈をめぐって~⑤
2025年12月5日
みなさん、こんにちは。
前回は、再審査請求においてⅠ/2の視標に関する認定基準が争点となった事例をご紹介しました。
今回も同じ認定基準に関わるテーマですが、取り上げるのは「I/2の視標の視野がそれぞれ5度以内におさまっていなくても2級に認められたケース」です。

まずは、本件の請求に至るまでの経緯についてご説明します。
■事例の概要
請求人/金子由香さん(仮名)・50代
傷病名/網膜色素変性症
請求方法/認定日請求
請求年金/障害厚生年金
金子さんは出生時から視力に問題はなく、幼児健診や学校健診でも異常を指摘されたことはありませんでした。
平成22年12月、兄が網膜色素変性症と診断されたことをきっかけに、遺伝性の可能性を考慮して、かかりつけのA眼科で精査を希望されました。
視野検査の結果、狭窄が確認され、網膜色素変性症と診断。
兄が通院していた別の医療機関へ紹介を受けました。
平成23年6月、紹介先の医療機関を受診。
精査結果と家族歴から確定診断に至り、その後は視野検査と経過観察のため定期通院を続けていました。
令和5年10月には転居に伴い転院され、視野狭窄が進行していたことから、障害者手帳および障害年金の申請を勧められました。
現在はロービジョンケアを含めた継続的なフォローを受けています。
さて、この金子さんですが、認定日時点(平成24年6月)に視野検査を受けておらず、認定日から同年9月までの期間の診断書を準備することができませんでした。
そのため、認定日を挟み込むように 平成23年12月の診断書1枚 と 現症の診断書1枚 を提出する方法を選択しました。
これは一般的な方法ではありませんが、網膜色素変性症のように不可逆的で進行性の疾患の場合、このような形の請求が認められることがあります。
さて、前回ご紹介した木村さんのケースでは、審査官・審査会ともに以下の2点を理由に請求を棄却していました。
①「I/2の視標で右眼の視野が5度以内におさまっておらず、左眼の視野が5度以内におさまっていること。」
②「ゴールドマン型視野計による周辺視野の評価(I/4)について、周辺視野の角度の合計は、添付された視野図のI/4視標の記載より、右が80度を超えており、左が80度以下であると判断したこと。」
そして、以下が金子さんの認定日当時に提出した診断書に記載されたⅠ/2視標の値です。
本件がどのように評価されたのか。次回へ続きます。
※個人情報保護の観点から、受診日および年齢は一部変更しています。
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