間質性肺炎(在宅酸素療法)・2級認定は可能か?③
2018年4月20日
みなさん、こんにちは。
前回、間質性肺炎の3級認定とされる基準及び2級以上の該当となるための基準についてお話しました。
ここで今般の比較対象として、日本法令出版の「障害年金審査請求・再審査請求事例集」(case3-22)で紹介された事例について見ていきたいと思います。
これは社会保険労務士である安部敬太氏が代理請求した事例です。
請求人:A(昭和23年生)
請求傷病:間質性肺炎
請求年金:障害基礎年金
このAさんは60歳を迎えた時点で老齢年金の繰り上げ受給をしていたため、事後重症請求の権利はなく障害認定日請求を行いました。まず、審査が行われる上で最も重要である数値から確認します。
以下、Aさんの障害認定日及び現症日の動脈血O2分圧及び一般状態区分表の判定結果です。(病状判定に際しては動脈血O2分圧が重視される)
(障害認定日当時)
動脈血O2分圧:「高度異常」
一般状態区分表:エ
(現症日)
動脈血O2分圧:「中等度異常」
一般状態区分表:ウ
またAさんの日常生活においても認定日当時は車いすでやっと移動できる状態であったこと、車いすでの移動時も自走はできず介助が必要であったこと、また現症日当時の日常生活状況においてはトイレに行き下着を上げ下げするだけでSpO2が70%台になってしまうこと、腕を上げる、入浴時の洗髪、冷蔵庫の野菜を取り出すといった動作においてもSpO2が低下する、洗濯物を干すだけで通常の20~30倍の時間がかかるといったような状況でした。
一方当事務所事例の20代男性は、単独での外出が困難で、自宅においても階段の昇降が不可能であるため自室を1階に設け、入浴やトイレに行く動作、ベッドから起床する動作においても酸素分圧が低下する等の症状はあるものの、自力歩行は可能でした。
以上のように数値と日常生活状況だけを比較してみても、Aさんの生活状況はこの20代男性の障害の程度より重症度が高いように思えます。
そのAさんは新規裁定から2級該当であることを訴えましたが、結局審査請求、再審査請求でも棄却処分。最後まで2級であるとは認められなかったようです。
このような事例を見ると、この20代男性が2級以上を勝ち取るためのハードルは相当高いように思われました。やはり在宅酸素療法施行は3級でしかないのでしょうか。
それでは次週に続きます。
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