障害年金、保険料を納付していないとどうなる?①
2023年9月29日
みなさん、こんにちは。
8月31日のブログにて保険料納付要件についてお話しましたね。
今日は保険料納付要件を満たすことができず、請求できなった事例等についてお話したいと思います。
請求者:昭和51年8月生(47歳)・男性
傷病名:双極性障害
まずこの男性のこれまでの受診歴や就労歴についてご紹介します。
この男性は高校卒業後、大学へ入学しました。大学入学後、他の学生とのトラブルを機に徐々に人間関係で悩むようになります。
最初は倦怠感や食欲不振といった症状が出現したため内科を受診していましたが、自ら精神的な原因を疑い平成10年1月、近くのA病院(心療内科)を受診しました。
医師から「うつ状態」との診断を受け、薬物治療が施行されました。
そして男性は通院を続けながら平成13年3月に何とか大学を卒業。
大学卒業後は一般企業に入社しましたが、ここでも職場での人間関係に悩み精神状態は非常に不安定な状態でした。
平成15年8月、男性は退職。
通院は継続していましたが、医師が独立開業したためそれに伴いB病院へ転院となりました。
そして平成16年4月、再就職。
その後通院を継続するも、睡眠時間が極端に短くなり頻繁に旅行に出かけたり金遣いが荒くなったりとそう状態が出現し始めました。
これを機に男性はB病院で「双極性障害」との診断を受けました。
平成11年8月、精神保健福祉手帳が交付。
男性は平成18年10月に退職し、その後は両親に経済援助等を受けながら生活しています。
通院は不定期になる時期もありその後転院も繰り返しましたが、現在まで継続しています。
さて、男性の両親が将来を心配し、当事務所へ障害年金の相談に来られたのですが、男性の初診日は学生期間であった平成10年1月のA病院となります。
しかしながら当時、学生であったことから国民年金の加入を失念しており未加入(未納)でした。
この男性の場合、障害年金における保険料の必要納付期間は20歳を迎えた平成8年8月~平成9年11月(初診日がある月の前々月)ですが、この間一切納付が行われていませんでした。
精神疾患で請求する場合、一般企業に長期にわたりフルタイムで勤めており健常者と同じ社会生活がおむね5年以上継続していた場合、社会的治癒を援用できる場合もありますが、この男性は継続的に通院しており症状が改善していた時期も少なかったため別の初診日を採用することもできません。
社会的治癒の条件については、過去の裁決例を見ると、必ずしも通院や服薬を行っていなかったことは必須ではない、つまり、通院や服薬が継続されていても社会的治癒を援用できる可能性があります。
しかし主治医と相談した結果このケースでは難しいとの判断を当事務所ではしました。
他に工夫の余地も検討しましたが、やはり請求は難しく断念せざるを得ないケースとなってしまいました。
初診日の解釈という点では救済できるケースもありますが、基本的に本来の意味での初診日において保険料納付要件を満たしていることが必要で、そうであれば社会的治癒という法理をわざわざ持ち出すまでもなく要件をクリアし請求できるわけです。
保険料納付要件は過去の納付実績を問われます。
若いから年金なんて関係ないと思わず、きっちり納付(免除や猶予制度も活用)する必要があります。
それでは次回はまた別のケースについてご紹介します。
今日はこの辺で。
※個人情報保護の観点から初診日等の日付は実際と異なります。
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